新聞小説史(昭和初期):高木健夫 1976年(昭51)11月~1978年(昭53)2月「新聞研究」304号~319号に〈昭和初期〉を連載。 1978年(昭53)3月~1981年(昭56)4月「新聞研究」320号~357号に〈昭和中期〉を連載。 明治篇から通算すると131回の連載だっ…
不思議な巷:大河内常平 1956年(昭31)あまとりあ社刊。 大河内常平(おおこうち・つねひら、1925~1986)は探偵作家として戦後の10数年間のみの活動しかなく、あまり記憶に残る大作もなかったので忘れ去られている。これは初期の短編10作を集めたもの…
犯罪蒐集狂:高木彬光 1955年(昭30)雑誌「小説倶楽部」に「顔のない女」を掲載。 1980年(昭55)桃源社刊。(ポピュラー・ブックス)全6篇。 犯罪蒐集狂:高木彬光、長尾みのる・画 表題作を含め、全6篇の短編集。『犯罪蒐集狂』は侠客を先祖に持つ探偵…
破魔弓伝奇:土師清二 1939年(昭14)12月~1940年(昭15)5月、読売新聞夕刊に連載。 1956年(昭31)東方社刊。 1958年(昭33)雑誌「小説倶楽部」に縮約版を掲載。 江戸中期に勤皇思想を鼓吹した儒学者山県大弐の疑獄事件を絡めて、由井正雪の子孫を自認す…
外相の奇病:神秘探偵、永代静雄 1919年(大8)実業之日本社刊。 永代静雄(ながよ・しずお、1886~1944)は作家としてよりも、明治文学史研究における田山花袋の『蒲団』の登場人物のモデルの一人として注目され、その生涯が「微に入り細に入り」詮索され続…
ミイラの招待:戸川幸夫 1958年(昭33)和同出版社刊。 動物文学者としてのほうが有名な戸川幸夫(1912~2004)は戦後昭和期に幅広い分野で作家活動を行った。この作品は探偵活劇仕立てになっている。 東京の奥多摩にある日原鍾乳洞を見学に行った仲良し三人…
切れ長の眼:田村泰次郎 1958年(昭33)和同出版社刊。 1958年(昭33)2月、雑誌「小説倶楽部」に『昼間の女』を掲載。 1958年(昭33)6月、雑誌「小節倶楽部」に『夏の花』を掲載。 1958年に雑誌「小節倶楽部」や「小説新潮」に掲載された連作風小品をまと…
火焔を蹴る:林禮子 1928年(昭3)改造社刊。表題は『男』、321頁、伏字なし。 1930年(昭5)万里閣書房刊。改訂15版。『火焔を蹴る』422頁、伏字あり。 1948年(昭23)白鯨社刊。表題は『男』、320頁、伏字なし。木村毅・序文。 1957年(昭32)洋々社刊。表…
金四郎桜:山手樹一郎 1957年(昭32)1月~1958年(昭33)7月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1958年(昭33)桃源社刊。 いわゆる「金さん」もの。江戸町奉行として歴史に名を残す遠山金四郎が青年時代に家を飛び出して、町屋に住み、遊び人として賭場に出入りし…
美しき果実:十和田操 1947年(昭22)3月~1948年(昭23)5月、雑誌「令女界」連載。 1948年(昭23)、真光社刊。 美しき果実:十和田操、三芳悌吉・画1 終戦直後、大陸からの引揚者たちの群れの中に幼い男の子を連れた若い娘がいた。彼女の名前は美雨(ミグ…
タケノコ夫人行状記:宇井無愁 1955年(昭30)和同出版社刊。 宇井無愁(うい・むしゅう、1909~1992)は戦後昭和期の大阪の劇作家および小説家。筆名がフランス語の「ウィ、ムッシュー」(Oui, Monsieur.=はい、旦那様)から来ているのは誰でもわかる。主に…
浅香主水捕物帳:佐々木杜太郎 1953年(昭28)春陽堂書店刊。捕物小説全集の内の一つ。全17篇。 1949年(昭24)2月、雑誌「富士」に「伝七油地獄」を掲載。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「心中富士講」を所収。 佐々木杜太郎(もりたろう、1906…
殺人環状線:島田一男 1956年(昭31)東方社刊。 1956年(昭31)1月、雑誌「小説倶楽部」に「東京犯罪地図」を掲載。 1961年(昭36)春陽文庫刊、表題を「信号は赤だ」に変更。 新宿警察署の中老の庄司部長刑事(デカチョー)とその部下たちの活躍を描く7篇…
白い蛇赤い蛇:舟橋誠一 1932年(昭7)11月~ 都新聞連載。 1932年(昭7)有光社刊、「純粋小説全集」第9巻所収。 1933年(昭8)紀伊国屋出版部刊。 1956年(昭31)8月、雑誌「小説倶楽部」に縮約版掲載。 1956年(昭31)三笠書房刊。 白い蛇赤い蛇:舟橋誠…
神出鬼没園田探偵(第一編):森田芝村 1913年(大2年)弘学館刊。 作者の森田芝村(しそん)については生没年不明。明治末期から大正にかけて「美文的模範書翰」などの文章読本の著者だった記録がある。伊藤秀雄の『明治の探偵小説』でも、探偵小説の黎明期…
旅人の喜び:庄野潤三 1956年(昭31)6月~1957年(昭32)3月、雑誌「知性」連載。 1963年(昭38)河出書房新社刊、Kawade paper backs, 28 戦中期の女学生の体験を思い出しながら、戦後の復興期を一家庭の主婦として生きる貞子の目を通して綴られる日常風景…
犬姫様:陣出達朗 1951年(昭26)9月~1952年(昭27)6月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1954年(昭29)文芸図書出版社刊。 1958年(昭33)同光社出版刊。『鞭を鳴らす鬼姫』と改題。 犬姫様:陣出達朗、成瀬一富・画 江戸城大奥の中臈夏乃が所有する満月丸とい…
緋鹿子捕物草紙:村上元三 1951年(昭26)新小説社刊、新小説文庫(第109、110)全2巻。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「まぼろし燈籠」を所収。 1953年(昭28)文芸図書出版刊。『夜叉頭巾ーお吟捕物秘帖』と改題。 これも女捕物帳の一つで、…
鬼神のお松:松林円玉 1899年(明32)今古堂刊。 松林円玉(しょうりん・えんぎょく、1866~1940)講釈師。明治後期に多くの口演速記本を出している。二代目松林伯円の弟子で、1889年に23歳の若さで五代目松林円玉を襲名する。のちに改名して悟道軒円玉とな…
お七と吉三:舟橋聖一、岩田専太郎・画 1946年(昭21)7月~9月、雑誌「りべらる」連載。 1955年(昭30)河出書房刊、大衆文学代表作全集第4(舟橋聖一集)所収。 恋慕する寺小姓の吉三郎に会いたい気持が高じて放火事件を起こし、処刑された八百屋お七の史…
男をチチル五人の娘:志智双六、田中比左良・画 1951年(昭26)6月~12月、雑誌「富士」連載。 志智双六(しち・そうろく, 1902~1983)についても前回書いた棟田博と同様に、その経歴に関する情報がネットでは見つからない。戦中に書いた「兵隊もの」が古書…
韋駄天弥ン八:棟田博 1950年(昭25)4月および6月、雑誌「富士」掲載。 1956年(昭31)東方社刊。 棟田博(1909~1988)は今ではほとんど忘れ去られた作家の一人と思われる。戦中期に従軍中の体験を書いた「兵隊もの」の作品で人気を得て、除隊後は従軍作家…
紅太郎捕物帖:土師清二 1948年(昭23)高志(こし)書房刊。 1951年(昭26)桃源社刊。 土師清二は昭和初期から戦中、そして戦後にかけて息の長い作家活動を続けた。特に戦後の捕物帳ブームの火付け役となった捕物作家クラブの副会長として(会長は野村胡堂…
鹿鳴館:富田常雄 1946年(昭21)8月~11月、雑誌「りべらる」連載。 1951年(昭26)講談社刊、「猿飛佐助」(講談社評判小説全集第5)所収。 1955年(昭30)平凡出版刊、「薔薇の紘道館」(平凡映画小説シリーズ)所収。 1964年(昭39)双葉社刊、「明治の…
八百屋お七恋廼緋鹿子:翁家さん馬 1893年(明24)駸々堂刊。 (こいのひがのこ)明治中期には円朝をはじめとする口演速記本が人気を呼んでいた。翁家さん馬(おきなや・さんば)も江戸時代から続く落語家の名跡で、この時期は5代目さん馬の盛期に当たる。…
虹は消えない:大庭さち子 1950年(昭25)1月~12月、雑誌「富士」連載。 これもNDLデジタルで戦後雑誌(一部)の閲覧・通読が可能となって読むことができた作品だった。大庭さち子(1904~1997)は戦中期の作品もあるが、戦後特に少女小説の分野で旺盛に活…
振袖地獄:角田喜久雄 1955年(昭30)1月~12月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1955年(昭30)同光社刊。 振袖地獄:角田喜久雄、志村立美・画 作者の得意とする「伝奇物」の一つと言ってしまえば簡単だが、「過ぎたるは及ばざるが如し」というのか、「奇」をて…
バス通り裏:筒井敬介・須藤出穂 1959年(昭34)くろしお出版刊。 戦後のテレビ放送初期の頃制作された連続ホームドラマの小説化本である。放送は1958年4月から丸5年間の長期にわたり、当時は絶大な人気を博していた。小説化は放送開始後1年半での1冊のみ…
世界風流艶笑譚:石井哲夫 1950年(昭25)4月~1951年(昭26)12月、雑誌「富士」連載。 1955年(昭30)妙義出版刊。(スマイル・ブックス) 世界風流好色譚:沢田正太郎・画1 当初「富士」連載のタイトルは『世界風流好色譚』となっていた。好色譚という面…
地上の星座:牧逸馬 1932年(昭7)5月~1934年(昭9)5月、雑誌「主婦の友」に連載。 1934年(昭9)新潮社刊。 「丹下左膳」の作者として有名な林不忘は、牧逸馬という別の筆名を使って昭和初期の現代小説家として多様なジャンルを跨いだ言わば「天衣無縫な…