明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

2026-01-01から1年間の記事一覧

『七人の惨殺』 孤舟漁隠

七人の惨殺:孤舟漁隠 1896年(明29)駸々堂刊、探偵小説第13集。 明治中期に盛んに刊行された駸々堂の探偵小説シリーズの一つだが、この作品に関しては、中身は探偵小説ではなく、犯罪実録もしくは事件記録、今でいえばノンフィクションに近いものだった。…

『宇都宮釣天井』 神田伯龍

宇都宮釣天井:神田伯龍 1896年(明29)駸々堂刊。 講談では有名な三代将軍家光に対するクーデター未遂事件である。原因となったのが、二代秀忠の嫡子三人のうち、長男が早世し、次男竹千代と三男国松のどちらに将軍位が継がされるかにあり、家臣の中に派閥…

『愛情の星』 菊田一夫

愛情の星:菊田一夫 1954年(昭29)8月~11月、雑誌「読切俱楽部」連載。 1957年(昭32)東方社刊。 戦後期のメロドラマのうちで最も有名な「君の名は」を書いた菊田一夫は、他にも非常に沢山の作品を書いた売れっ子作家だった。この「愛情の星」もその一つ…

『振袖剣光録』 高木彬光

振袖剣光録:高木彬光 1956年(昭31)5月、雑誌「小説倶楽部」臨時増刊号掲載。 1956年(昭31)東京文芸社刊。 表題作の中篇「振袖剣光録」と短篇6作を含む高木彬光の時代小説。 振袖剣光録:高木彬光、木俣清史・画 八代将軍吉宗はその権力を確かなものに…

『園井警視総監:探偵奇談』 竹葉散人

園井警視総監:竹葉散人 1909年(明42)此村欽英堂刊。 『S巻美人』の完結編。比叡山中で発見されたS巻美人の他殺体がなぜ名古屋の富貴令嬢おきぬに酷似しており、親族でも見分けがつけられなかったのかが解き明かされる。原作の書き方がそうだったのだろう…

『佐賀猫退治』 神田伯龍

佐賀猫退治:神田伯龍 1899年(明32)田村熙春堂刊。 古来有名な鍋島藩の化け猫騒動の一部始終を語った一篇。出版年から推察すると神田伯龍は3代目と思われる。これまでにも化け猫をテーマにした作品を読んできたが、(下掲)予想以上に多かった。なぜか九…

『俊傑神稲水滸伝』第1巻 岳亭丘山

俊傑神稲水滸伝:岳亭丘山 1893年(明26)扶桑堂刊。 1903年(明36)博文館、続帝国文庫、第44巻(挿画なし) 「俊傑神稲水滸伝」(しゅんけつ・しんとう・すいこでん)は江戸期から明治中期まで書き続けられた稗史小説の一つ。作者の岳亭丘山(がくてい・き…

『杉田文学士:探偵奇談』 竹葉散人

杉田文学士:竹葉散人 1909年(明42)此村欽英堂刊。 タイトルからは判りにくいが、同じ作家による『S巻美人』の続篇になる。前作で失踪した令嬢おきぬの恋人として一緒に東京へ駆落ちをしたが、テロ結社の社会党との関係を警察から疑われた。大卒の学士は…

『可否道』 獅子文六

可否道:獅子文六 1962年(昭37)~1963年(昭38)、読売新聞連載。 1963年(昭38)新潮社刊。 1969年(昭44)「コーヒーと恋愛」と改題して角川文庫刊。 獅子文六(1893~1969)の晩年の一作である。無類のコーヒー好きが集まる日本可否会の会員たち5名の…

『S巻美人:探偵奇談』 竹葉散人

S巻美人:竹葉散人 1908年(明41)此村欽英堂刊。 作者の竹葉散人(ちくよう・さんじん)は生没年、本名、出身地などまったく不詳。明治後期にシェイクスピア作品を翻案紹介した翻訳家とされるが、探偵小説も何点か書いている。この『S巻美人』もその一つ…

『樹上廼死骸:幕府奇談』 柳崕亭友彦

樹上廼死骸:柳崕亭友彦 1894年(明27)扶桑堂刊。 柳崕亭友彦(りゅうがいてい・ともひこ、?~1909)は萬朝報の記者であり、作家だった。本名は片山友三郎。戯作者柳亭種彦の流れを継ぐ高畠藍泉の門人として、柳の字を号としたと思われる。柳崕亭としては…

『新訳絵入伊勢物語』 吉井勇

新訳絵入伊勢物語:吉井勇、竹久夢二・画 1917年(大6)阿蘭陀書房刊。 「伊勢物語」は高校時代の古典の教科書あるいは学習参考書などで部分的にしか接していなかった。本書を見つけたおかげで、一応全文を通読することができて良かった。吉井勇が訳したのは…

『決闘街』 宮本幹也

決闘街:宮本幹也 1958年(昭33)桃源社刊。 主人公の雄二は戦災孤児で、終戦直後は有楽町のガード下で靴磨きをしていたが、駐留軍の米兵に拾われて12年間沖縄で暮らした。空手の技も身につけた。久しぶりに帰ってきた有楽町は懐かしさもあったが、大きく…

『探偵手塚竜太』 甲賀三郎

探偵手塚竜太:甲賀三郎 1956年(昭31)東方社刊。 怪しい弁護士手塚竜太の活躍する連作短編集。戦前昭和期に書かれたもの。ここでは7篇と他の短篇2篇が収められているが、専門的なサイト「甲賀三郎の世界」にある記事『私の甲賀三郎・雑記録3 第三話 怪…

『猫間明神』 高山怨縁

猫間明神:高山怨縁 1917年(大6)大川屋書店刊、「怪談百物語」第8巻。 大川屋書店では「怪談百物語」をシリーズとして100巻出すつもりだったらしいが、計10巻止まりとなった。(下掲の広告参照) この巻では、表題の「猫間明神」のほか「水沢の化け…

『平和?戦争?シビリゼーション』 高橋筑峰

平和?戦争?シビリゼーション: 高橋筑峰 1917年(大6)春江堂書店刊。 タイトルの「シビリゼーション」または「シヴィリゼーション」は、辞書では ”civilisation”「文明」とかの意味になるだろうが、ここでは同時期に日本で上映されていた外国映画のタイト…

『傷ついた乙女椿』 竹田敏彦

傷ついた乙女椿:竹田敏彦 1954年(昭29)1月~7月、雑誌「読切俱楽部」に連載。 1954年(昭29)東方社刊。 終戦直後の特異な愛の姿を描く。主人公は苦学生の慎吾。同郷で同大学に通う雪子と親しいが、名士令嬢との経済環境には大きな落差がある。彼は就職が…

『幸福は虹の色』 北村小松

幸福は虹の色:北村小松 1954年(昭29)1月~12月、雑誌「読切俱楽部」に連載。 1954年(昭29)東方社刊。 北村小松(1901~1964)は戦前戦中期まで映画のシナリオを数多く書いていた。戦後はユーモア小説を中心に活動した。雑誌連載では絵物語風に色刷り挿…

『円朝人情噺』 三遊亭円朝

円朝人情噺:三遊亭円朝 1913年(大2)日本書院刊。 「人情噺、闇夜の梅」「怪談噺、怪談阿三の森」、「心中噺、心中時雨傘」の三題を収める。 闇夜の梅:三遊亭円朝、大蘇芳年・画(円朝全集1) 「闇夜の梅」は、大店の娘お梅と手代の粂之助が恋仲となった…

『大熱風』 牧野吉晴

大熱風:牧野吉晴 1955年(昭30)1月~、雑誌「読切俱楽部」に連載。 1957年(昭32)同人社刊。 単行本には表題の長編『大熱風』のほか、3つの短篇を収める。いずれも戦中から戦後にかけての混乱の時代を描いている。 大熱風:牧野吉晴、下高原健二・画1 『…

『悲しき運命』 稲庭恒子

悲しき運命:稲庭恒子 1914年(大3)日吉堂本店刊。 大正期の女流作家、稲庭恒子(いなにわ・つねこ)の家庭小説。山師の叔父に騙されて大きな借財を背負ったまま病気で死んだ両親。後に残された三人の子は、長女の静子が小学校の教員として働き、弟良輔は…

『仮面の商標』 邦光史郎

仮面の商標:邦光史郎 1963年(昭38)文芸春秋新社刊、ポケット文春。 邦光史郎(1922~1996)の社会派推理小説。繊維メーカー「国際レーヨン」の調査部所属の主人公杉野浩治は、自社ブランドの贋物の粗悪品を製造販売している会社を突きとめるため、長期欠…

『さかるゝ仲』 小川霞堤

さかるゝ仲:小川霞堤 1916年(大5)贅六堂刊。前後全2巻。 作者の小川霞堤(おがわ・かてい)については以前、デビュー作と思われる『悲しき仇』(1911年・明44)渡辺霞亭と共作で読んだことがある。大阪の出版社との関係も多く、関西が活動の地盤だったよ…

『青春の扉』 鹿島孝二

青春の扉:鹿島孝二、田中比左良・画1 1956年(昭31)雑誌「読切俱楽部」に『掌の恋占い』掲載。 1947年(昭22)雑誌「男女}に『兄の手紙』掲載。 1953年(昭28)東方社刊、全13篇。 青春の扉:鹿島孝二、田中比左良・画2 鹿島孝二(1905~1986)の文筆活…

『白衣の女:冒険探偵』 橘刺紅(訳著)

白衣の女:橘刺紅 1918年(大7)真文社刊。 作者の橘刺紅(たちばな・しこう)については、大正期の文筆家として著作が数点見られるが、小説家ではなかった。『白衣の女』は英国のウィルキー・コリンズの名作と同じ題なので、当初翻案かなと思ってみたが、設…

『忠治三国志』 宮本幹也

忠治三国志:宮本幹也 1953年(昭28)6月~1954年(昭29)5月、雑誌「読切俱楽部」連載。 1954年(昭29)桃源社刊。 最初は「国定忠治銘々傳」と称して国定忠治の子分たちを一人ずつ紹介する話を掲載していた。講談などでも有名な「日光の円蔵」「清水の頑鉄…

『夜霧の顔』 菊田一夫

夜霧の顔:菊田一夫 1947年(昭22)12月~1948年(昭23)5月、雑誌「男女」連載(中止?) 1949年(昭23)4月、雑誌「婦人ライフ」に『花に降る雨』掲載。 1955年(昭30)1月~7月、雑誌「読切俱楽部」に再連載。 1955年(昭30)東方社刊、東方新書。 表題作…

『池田大助捕物手柄話』 野村胡堂

池田大助捕物手柄話:野村胡堂 1950年(昭25)矢貴書店刊、野村胡堂捕物名作選集第3巻。 1954年(昭29)2月~12月、雑誌「読切倶楽部」連載。 池田大助捕物手柄話:野村胡堂、中一弥・画 大岡越前守の股肱の一人として、池田大助の名前は、例えば天一坊事件…

『夜歩く』 横溝正史

夜歩く:横溝正史 1948年(昭23)2月~ 雑誌「男女」連載。 2016年(平28)角川文庫 最初は偶然、NDLのデジタルコレクションに収容されたプランゲ文庫中の戦後雑誌「男女」を覗いているうちに、横溝の「夜歩く」の初出記事の最初の数回分を読めることがわか…

『君は今宵も』 竹田敏彦

君は今宵も:竹田敏彦 1954年(昭29)8月~1955年(昭30)5月、雑誌「読切俱楽部」連載。 1955年(昭30)東方社刊。 タイトルとしてはメロドラマ風なのだが、作品としては乙女チックな純愛物語だった。代議士令嬢俊子が思いを寄せる苦学生省吾はアルバイトと…