明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『髑髏団』(幽霊屋敷) 小原柳巷

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1916年(大5)三芳屋刊。小原栁巷(りゅうこう)は経済雑誌の記者だったが、欧米の冒険小説に着想を得て、自分なりの小説を都新聞に連載したところ、大いに人気を獲得したという。向島小松島にある旧大名屋敷は大実業家に買取られた後に荒廃し、幽霊屋敷と呼ばれていたが、ある義賊の結社が秘かに拠点とする。その実業家の遺児たちは管財人に騙され、都内で困窮した生活を送っている。ある奇妙な新聞広告から物語は動き出す。謎解きあり、誘拐劇あり、活劇ありの盛り沢山の内容で、痛快な冒険小説の味わいがする。個々の事象をあまり深く考えると理屈がつかなくなるので、純粋に筋の展開を楽しんで行くのがいい。☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は服部峰厓(ほうがい)。(石版画のようにも見える)

 

※文節抜粋

 序文より《現代の小説は余りにむつかしい、(---) 惟ふに這は専門家が専門的の思索を其作物の上に現さうとするに外ならぬ結果ではあるまいか。此断定が誤らぬとすれば、茲に素人の書いた素人小説の存在が必要となって来るわけだ。何故かなれば小説の読者としては、玄人よりも素人の方がより以上に多かるべき筈であるからである。》

 

 八一回《小説と云ふのは、当時流行の自然派とか云ふものの作で、作者自身の惚気話やら何やらを同じ流行の平面描写とやらいふ調法な筆法で牛の涎の様にだらだらと冗く延したもの》

 

※参考サイト:向島八洲園・小松島隅田川沿い)

https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00647/

 

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