(うろこ・よのすけ)1912年(大1)樋口隆文館刊。作者の如鬼坊(中村兵衛)は当時の神戸又新日報の記者だったというが、生没年他もほとんど不詳。下総・印旛村の庄屋の息子與之介が印旛沼の主とされた大鯉の助命を願ったため、神通力(透視力)を授かり、それを駆使しながら筑波山、水戸、江戸、大磯、駿府と各地を漫遊して経験を積む。ファンタジー風味の加わった荒唐無稽なピカレスク譚とも言える。大岡越前、天一坊も登場し、江戸中期の風俗や生活習慣、考え方、特に理屈の言い回し方など今となってはむしろ新鮮な再発見となったのは興味深かった。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクションで所載。歌川国松の木版美人画が口絵に添付。
※版元樋口隆文館の奥付広告