明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『女賊三人』 鹿島桜巷

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1915年(大4)樋口隆文館刊。前後2巻。立て続けに鹿島桜巷を読むことになった。泥鼈(スッポン)のお仙、児雷也阿国、萬引お豊の三人の女賊のオムニバス風物語。一見美人の若妻でスリに見えないお仙は、大阪で相手の鞄に入っていた泥鼈に左小指を食いちぎられる失敗をして、徳島の山奥まで逃亡する。回復したお仙は東京へ向かう列車内で別の女がスリを働くのに居合わせる。年増の児雷也阿国だった。お仙は浅草の阿国の許に身を寄せることになる。三人目のお豊は京都の清水寺近くの茶店で働くが、見かけは良くても根が蓮っ葉な女で酒も強く、店から追い払われて神戸の宿屋に雇われる。そこは海外へ賤業婦を送り出す拠点だった。彼女も半ば強引に船に乗せられ台湾まで行くが、そこで逃げ出し、台北のホテルで男どもを手玉に取って金品を盗んで日本に帰る。三人は熱海の旅館で親しくなり、浅草の阿国の家で暮らすが、悪徳高利貸一家に対する天誅の企てが度を越したものとなり、一網打尽となる。典型的なピカレスク譚だが、男勝りの犯罪を続けおおせるはずはなく、まして美化できるものでもないので、どこでその命運が尽きるのかと思いながら読み進むことになる。作者は前に読んだ作品でも台湾についての描写が詳しく、土地勘があるのではと思えた。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は谷洗馬。

dl.ndl.go.jp

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