明治埋蔵本読渉記

明治期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『現代文士二十八人』 中村武羅夫

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(なかむら・むらお)1909年(明42)日高有倫堂刊。明治末期時点での文壇の中心人物と目された作家、詩人、歌人、評論家の28人との会見記をまとめたもの。最近、講談社から「明治の文豪へのノーアポ、突撃インタビュー!」という宣伝文句で再刊されているが、当時は電話もメールもなく、自宅へのノーアポ訪問は当たり前だった。夏目漱石の玄関には「木曜日以外は面会謝絶」という貼り紙があったという。内容は、ちょうど似顔絵書きが本人と対面してスケッチするように、その作家宅への訪問印象記である。かなり独断的で無遠慮な表現も見かける。当初この本は「王春嶺」という中国風の作者名で出版されていてほぼ匿名に近かった。漱石、花袋、独歩、秋声、藤村、鏡花などの人物像を読み知るのは親しみがわくが、それ以上の踏み込み、つまり作品を生み出すに至る内面や背景には当然ながらなかなか言及できるものではない。残りの半数近くが現在では完全に忘れ去られた作家なのも感慨深い。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。

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