1893年(明26)春陽堂刊。探偵小説第6集。明治中期の第1次探偵小説ブームの影響で売れなくなった硯友社の作家たちへ春陽堂が話を持ちかけ、匿名を条件に探偵小説の翻訳もしくは執筆を依頼したもの。真の作家名は不明のままで残されたものが多く、文体はしっかりしているが、素材が玉石混交だった。この作品も元は米国の探偵物を人物を和名に、舞台を東京とその周辺に置き換えている。原作は不明だが、米国好みのアクション活劇風であり、推理の過程や行動には稚拙さが見える。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は無い。
※作者の言い訳が序文に載っている。
《此の一篇は蟹が這ふ横文字を横にたどりてものするにしあんなれば、平生(つね)によだけく(仰々しく)おごりつると云(いふ)なる口にも似で(似ず)、思ふ半(なかば)もままには筆をあやつりかねつ》