明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『恋の短銃』 大沢天仙

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1903年(明36)駸々堂刊。国会図書館デジタル・コレクションhttps://dl.ndl.go.jp/ ではキーワード検索すると、多くの関連文献が表示される。さらにそれを NDC分類(9類文学)で絞り込むと、読みたくなりそうな小説類が出てくる。その一覧表を保存しておいて、タイトルを呼び出しては面白そうかどうかのいわば「立ち読み」もできる。キーワードは何でもよく、「謎の女」、「怪奇」、「髑髏」、「美人」、「不思議」などの言葉ごとに(もっと真面目な題名でもいいが)意外と多くの作品が出てくるのに魅了されてしまう。

今回は「短銃」(ぴすとる)で出たのを二三続けて読んだ。明治期にはまだ銃規制等の法整備も遅れていたようで、欧米並みに一般人が護身用として銃を所持していたことが伺える。あるいは翻訳物、翻案物の影響で、日本でもその題材で書かれたのかもしれないが、短銃を使った話は少なくない。男爵家の資産を相続した美人の女流作家との結婚をめぐって三人の男がそれぞれ短銃を持って入り乱れるという話。互いに拳銃を握って対峙した場合、一方が死んでも他方は正当防衛としては認められない判例も興味深い。作者の大沢天仙(てんせん)は硯友社系の江見水蔭の門下で、活劇風の通俗小説を書いたが、33歳で早逝した。言文一致体が定着した頃で、語り口は平易で読みやすい。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は黙仙(もくせん)。

dl.ndl.go.jp

 

 

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