明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『夜半の嵐』 泉清風

 

1919年(大8)春江堂刊。泉清風(せいふう)は大正期に欧米から輸入された無声映画のノベライズ本の作者として活躍した。数年で20数点を出している。しかしノベライズ本の多くは、写し出された映像に従属して語りを加えるためか、普通の小説本や講談本に比べてどうしても浅薄な印象を免れない。

この小説は泉が書いたオリジナルの悲劇小説だというので読んでみたが、作品としての構成力が弱く、例えてみれば家屋を四隅の柱から建てたものの、その柱の間を壁が繋がらず、全体の筋立てが成り立たなかった。個々の人物の挿話(例えば碑文谷の踏切番の話など)は良く書けているのだが、全体の流れとしてはプロット集の下書きのような未完成品としか言いようがなかった。☆

 

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。表紙絵・口絵作者は未詳。

dl.ndl.go.jp

 

 

 

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