1957年(昭58)雑誌「小説倶楽部」桃園書房発行。新年特大号に掲載。
「伝七捕物帳」は映画化やテレビドラマ化される頻度が高かったせいか、知名度は高い。しかし当初は捕物作家クラブの作家たちによる共同企画で、合作だった。初出は京都新聞での連載だったが、映画化で封切になるのに便乗して、その原作を「小説倶楽部」に再掲載したようだ。作者名は、野村胡堂、城昌幸、谷屋充、陣出達朗、土師清二の5名の連名で、数章ごとにリレー方式で書き継いだと思われる。その名残らしいのが、煉瓦のつなぎ目のように物語の筋の飛躍やちょっとしたズレとして感じられるのは仕方がない。それでも錚々たる捕物作家のお歴々の筆致には確たるものがあり、読物雑誌特有の挿絵共々楽しむことができた。紙面の都合もあっただろうが、欲を言えばあと一人いれば事件解決の大団円部分を単なるあらすじで済ませずに完結できたと思う。☆☆
「伝七」物はその後、陣出達朗が単独で書き続けたが、それまでの「合作」は雑誌掲載にとどまり、あまり出版されなかったのが多い。今回はそれを再発見できて幸運だった。
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1790624
挿絵は木俣清史。