明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『人肌千両~黒門町伝七捕物帖』 野村胡堂・他4人の合作

 

1954年(昭29)東京文芸社刊。1949年に発足した捕物作家クラブの中心にいた野村胡堂、土師清二、城昌幸、佐々木杜太郎、陣出達朗の5人によるリレー形式の合作になる。合作による「伝七」物は新聞や雑誌への連載でしばらく続いたが、1953年から足かけ10年にかけて松竹と東映で13作の映画化が行われた。主演はすべて高田浩吉。その半数以上の原作が合作であり、今でも読むことができる。

 

「人肌千両」は映画化第1作で、上映に合わせて単行本として出版された。語尾を「です、ます体」で統一し、野村~陣出~佐々木~城~土師の順で執筆された。江戸を騒がす怪盗団「疾風」(はやて)に狙われ、脅迫状で千両箱を用意するように脅された旗本の屋敷に、それを警戒すべく町の捕方も周囲を固めるが、火事騒ぎで混乱するうちに盗まれてしまう。ルパンのような手口だが、捜査上何の手がかりも出てこない描き方をすると、今まで登場した人物たちの誰かだろうと考えざるを得なくなる。リレー形式の限界というか、創作責任者の問題にもなってくる。☆☆

 

併載の「おぼろ頭巾」も同様の設定だったせいか、映画化はされなかった。こちらの方が義賊としてのアナーキーな思想が盛り込まれていた。

 

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。挿絵は無し。

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1643584

 

伝七捕物帳 - Wikipedia

 

 

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