1955年~1957年(昭30~32)雑誌「読切倶楽部」に連載。
「からす堂シリーズ」の第3巻。「夜桜お千代」、「花曇り村正」、「教祖お照様」の3中篇を収める。
思うにこのシリーズの主人公はからす堂ではなく、居酒屋「たつみ」の女将お紺であることがわかる。からす堂はお紺の危機を救う正義の味方なのだ。一件の話のきっかけがお紺の心情のゆらぎとそれに触発された行動に絡んでくる。
からす堂に惚れたと明言する「夜桜お千代」との女の一念の鞘当てに加えて、巧妙なトリックによる犯行で右往左往させられる。
また「教祖お照様」では、江戸の根岸に現れた「お照様」という新興宗教と、それに群がる有象無象のにわか信者たちの生態を描いていて興味深かった。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は木俣清史。
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