1936年(昭11)春秋社刊。作者は昭和初期から戦後期にかけて探偵小説やユーモア小説の分野で活躍した。多弁な語り口が特徴。この作品は関東大震災後の昭和初期、六大学野球のWK戦を背景に立て続けに起きる殺人事件とそれに振り回される関係者の行動ぶりが描かれている。探偵らしい探偵は出てこない。プロットを構成する題材がてんこ盛りで、読者としては頭の中で整理しきれないほどだった。風呂敷の広げすぎに思える。事件ごとの関係者の証言集は、芥川の「藪の中」の手法を思わせる。暗号解読は凝り過ぎて判りにくい。当時の風俗を垣間見れたのは面白かった。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵・挿絵なし。
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*参考ブログ:探偵小説三昧
北町一郎『北町一郎探偵小説選I』(論創ミステリ叢書)2018.10.08
http://chapcolo.blog97.fc2.com/blog-entry-2572.html