明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『振袖地獄』 角田喜久雄

振袖地獄:角田喜久雄

1955年(昭30)1月~12月、雑誌「小説倶楽部」連載。

1955年(昭30)同光社刊。

振袖地獄:角田喜久雄、志村立美・画

作者の得意とする「伝奇物」の一つと言ってしまえば簡単だが、「過ぎたるは及ばざるが如し」というのか、「奇」をてらい過ぎるとどこかに不整合が出来て、すっきりと収拾できない面が見えてくる。ここでは悪党一味の内部崩壊が進んで、そもそも何が欲得だったのかが見えにくくなった。物語の進行は女性が中心で、振袖の娘の連続誘拐、古着の振袖をめぐる横奪戦、女泥棒の追捕、さらには刺青趣味、男色という多様な要素が入り乱れて目まぐるしかった。美しく妙齢のヒロインの危機を救う若侍がいないとなると、女性は自力で何とかしようとせざるを得なくなる。女装する男が多いのにも幻惑した。☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1662282/1/3

https://dl.ndl.go.jp/pid/1790612/1/130

雑誌連載時の挿絵は志村立美。

振袖地獄:角田喜久雄、志村立美・画2

 

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