1955年(昭30)1月~12月、雑誌「小説倶楽部」連載。
1955年(昭30)同光社刊。
作者の得意とする「伝奇物」の一つと言ってしまえば簡単だが、「過ぎたるは及ばざるが如し」というのか、「奇」をてらい過ぎるとどこかに不整合が出来て、すっきりと収拾できない面が見えてくる。ここでは悪党一味の内部崩壊が進んで、そもそも何が欲得だったのかが見えにくくなった。物語の進行は女性が中心で、振袖の娘の連続誘拐、古着の振袖をめぐる横奪戦、女泥棒の追捕、さらには刺青趣味、男色という多様な要素が入り乱れて目まぐるしかった。美しく妙齢のヒロインの危機を救う若侍がいないとなると、女性は自力で何とかしようとせざるを得なくなる。女装する男が多いのにも幻惑した。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1662282/1/3
https://dl.ndl.go.jp/pid/1790612/1/130
雑誌連載時の挿絵は志村立美。