1946年(昭21)7月~9月、雑誌「りべらる」連載。
1955年(昭30)河出書房刊、大衆文学代表作全集第4(舟橋聖一集)所収。
恋慕する寺小姓の吉三郎に会いたい気持が高じて放火事件を起こし、処刑された八百屋お七の史実をもとに、江戸時代に井原西鶴が「好色五人女」中の一篇として書いていた。舟橋聖一はそれを現代語にリライトしたとも言える。少し前に明治期の口演速記本『八百屋お七恋廼緋鹿子』(*)を読んだばかりだが、お七の事件はそこでは補足的な記述に留まっていた。
舟橋版は西鶴の原文を頻繁に引用しつつ、一途に思いつめる女の情念の恐ろしいほどの奥深さを語っている。言い方を変えてみれば「ロメオとジュリエット」の恋人たちの心情に共通するものがあるようにも思えた。終戦直後の雑誌「りべらる」に3回連載された。岩田専太郎の挿絵が何とも言えず美しい。この後に舟橋は『切られお富』の中篇も連載していたが、そちらは部分的でしか読めず、全体を読める全集本も見つからないので断念した。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12851559/1/17
https://dl.ndl.go.jp/pid/1355894/1/154
雑誌掲載時の挿絵は岩田専太郎。