1939年(昭14)12月~1940年(昭15)5月、読売新聞夕刊に連載。
1956年(昭31)東方社刊。
1958年(昭33)雑誌「小説倶楽部」に縮約版を掲載。
江戸中期に勤皇思想を鼓吹した儒学者山県大弐の疑獄事件を絡めて、由井正雪の子孫を自認する河内破魔次郎は千破剣(ちはや)党を結集させる。彼らは由井正雪が久能山に隠した埋蔵金を手に入れ、倒幕を試みようとする。その在り処を示す図面の小函をめぐって幕府側の黒幕黒風党の一味と激しい争奪戦を繰り広げる。
伝奇物を構成する要素は、埋蔵金、地図の争奪、徒党の対立、激闘、いずれも癖のある男女、多様な人物の入り乱れ、などになる。この作品では妙に芝居がかった勿体ぶりや、大志を抱いた気負いなどが見え隠れしてぎこちなさを感じた。部下の鳥刺や幇間として動く人物の描写は個性が表われて好感が持てた。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1355465
https://dl.ndl.go.jp/pid/1790456/1/153
雑誌掲載時(縮約版)の挿絵は木俣清史。