明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『裸女と拳銃』 鷲尾三郎

裸女と拳銃鷲尾三郎

1956年(昭31)3月~5月、新聞「内外タイムス」に連載。原題は『地獄の神々』

1959年(昭34)同光社刊。

1959年(昭34)春陽文庫

この作品は1958年に日活で映画化されたときのタイトルが「裸女と拳銃」であったため、以後の刊行ではそれに変更された。このほうが食いつきやすい感じなのは確かだ。

 

主人公は新聞社のカメラマンだが、盛り場で飲んだ後、路地を歩いていると突然全裸の若い女が飛び出してきて彼に助けを求める。彼は彼女に自分のコートを着せて、タクシーで彼女の自宅まで送るが、その家でいきなり頭を殴られ気絶する。気がついた時、他には誰もおらず、一人の男が殺されていた。冒頭のこれだけの展開でも読者を引きずり回す要素に満ちている。全体的にハードボイルド風のアクションが続き、推理の頭を回すゆとりを与えない。主人公も深く考えずに相手の居所に飛びこんでいくという無鉄砲さが目立つ。後から考えると筋の展開にかなり無理な点や飛躍があるのだが、しかも作中の「全裸の女たち」の登場が多過ぎても決してエロにはならず、ドライな活劇として楽しめた。☆☆

 

裸女と拳銃:日活 / 映画情報 1958.01

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1669484/1/3

 

「用心棒ならむかんぜ。それとも、君の足の裏でもくすぐるのか?」

「ううん。もっと上の方ならどう?」

彼女はそういって、色っぽい目つきで健策を見た。(地獄船)

 

映画情報 1958.01