
1958年(昭33)講談社刊。全6篇。
柴田錬三郎 (1917~1978) の現代物の中短篇6篇を集めたもの。
『生きとし生けるもの』は戦後の早い時期に書かれたもので、混乱期の人世を必死に生きようとしながらも力尽きる人々の姿を読んで、この作家が芥川賞の候補にも上がったことがあることを知ってその創作の懐の深さを感じた。
表題作『銀座の沙漠』や映画化された『仁義と海賊』は物語を構成するパーツが散りばめたのはいいのだが、まとめ方を欠いているような気がした。
『仮面紳士』はスタンダールの「赤と黒」の主人公に倣って、人気作家の絶頂を手中にしかけた男と、それまでさんざん彼に弄ばれた女たちの復讐心との騙し合いが構成的にもよく作られて面白かった。☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1646902/1/3
https://dl.ndl.go.jp/pid/11005099/1/25
雑誌「小説公園」掲載の『生きとし生けるもの』の挿絵は斎田武夫。
《ああ、なぜ、日本の女は、最も不幸な悲しいことを打明ける時には、必ず微笑するんだらう。》(生きとし生けるもの)
《死者の哀れさが強く心をうったのは、事実がこのやうに圧縮した数行の活字になって、須貝の机上にはこばれた時だった。(…)人間が、かうして、たったこれだけの活字で片づけられてゐるのだ。》(生きとし生けるもの)

《けれども、女性というものは、いったん愛情を傾けてしまうと、男性のどんなすさまじい性格でもゆるしてしまう。いや、かえって、その性格を、凡人と区別する秀れた特質とさえ、自分自身に無理やり納得させてしまうことがある。》(仮面紳士・七)
