明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『大願成就』 源氏鶏太

大願成就:源氏鶏太

1959年(昭34)角川書店刊。

1965年(昭40)東方社刊。

1966年(昭41)講談社刊、源氏鶏太全集第19巻。

 

 戦後復興期のサラリーマン小説の一類型。資金繰りが苦しい製造業の会社が社長の友人の経営する他の会社から資金提供を受ける代わりに役員や社員の派遣を受け入れることを承諾する。小説ではこの乗っ取り劇を、終戦後の進駐軍の言うがままにならざるを得なかった国政の屈辱と混乱に例えている。愛社精神に満ちた熱血部長の奮闘もむなしく、長いものには巻かれろという、権力者への服従も処世術になる。会社勤めを経験した人間からすれば題材に何の新鮮味もなく、共感さえも陳腐に思えてくる。最後は権力獲得のための裏金工作をどう暴くかがカギとなる。登場する女性たちの健気なさやしたたかさには好感が持てた。☆☆

 

大願成就:松竹(1959)

 源氏鶏太の作品は映画化されたものが多い。この作品も松竹で撮影が進行中だったが、主役の熱血部長を演じていた高橋貞二という当時第一線の人気俳優(小林桂樹タイプ)が自動車事故で急死したため、内容を変更し、死んだ部長に代わって若手社員が悪徳役員を辞任に追い込むように完成させている。

https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/03292/

 

※好漢高橋貞二の急死:『映画情報』1960年1月号

https://dl.ndl.go.jp/pid/10339736/1/49

 

大願成就:松竹(1959)

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1357641/1/3

 

《結局、お互は、一介のサラリーマンに過ぎないのである。大資本の前には、手も足も出ないのだ。そして、敬子の父もまた、手も足も出ないままに、口惜しい思いを残して、死んで行ったのであった。》(敗北の予感)

 

大願成就:松竹(1959)

 

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