
1925年(大14)プラトン社刊。
岡本一平(1886~1948)は画家、漫画家、文筆家と称される。岡本太郎の父親である。朝日新聞社に入社して、紙面に漫画漫文という時流に即したスタイルの戯画で人気を博した。
序文にある通り、「絵画脚本」という新たな試みを勧められたのを機に、弥次喜多の人物像を借用しつつも「一九の膝栗毛に絡はる卑俗な臭ひ」を縦横に駆使して小劇本にまとめた。どこか江戸期の絵草紙を思わせる軽妙さがある。弥次喜多は宿場町ごとに可愛い娘に出会うことを楽しみに旅を続ける、という他愛もない話なのだが、それが人間の行動原理なのも否めない。何と言っても漫画が楽しい。☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1017783/1/3
挿絵は岡本一平。

「俺達近代人は何かしらに酔って居なくては寂しくてしやうがないのだ。美人の狐にばかされでもしなければ、醒めた心の冷めたさに堪へられぬのだ。」(赤阪の狐)