明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『裸女地獄:振袖小姓捕物控』 島本春雄

裸女地獄:振袖小姓捕物控、島本春雄

1956年(昭31)久保書店刊。

 この「振袖小姓」シリーズは、戦後のカストリ雑誌の一つ「妖奇」に1949年(昭24)から足かけ4年ほど連載が続いた。「妖奇」はオール・ロマンス社の発行で「日本唯一の異色探偵誌」と銘打っていた。作者の島本春雄(1923~2008)についてはほとんど情報がないが、長年久保書店で編集の要職を重ねた人で、二足の草鞋だった。全部で50篇を超える「振袖小姓捕物控」が代表作とされる。この巻ではそのうちの8篇を収める。

 

 江戸北町奉行遠山金四郎の役宅に起居する小姓の美弥太郎(美祢太郎の誤植?)のもとに、御用聞きの剽軽金太が持ち込んでくる事件がどう解決されるかが基本路線。江戸時代には美少年を小姓として寺や大名屋敷で抱えることが多かったが、美弥太郎も小町娘顔負けの美貌を誇り、時には女装しながら謎解きに取り組む。各篇のタイトルから想像されるエログロ味は少なく、割合あっさりと描かれていた。トリックはややひねり過ぎの感もあった。☆☆

裸女地獄:振袖小姓捕物控、島本春雄、須磨利之・画

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1790624

挿絵は須磨利之。



オンデマンド復刊本で知られる「捕物出版」から全作品が4巻で出されている。

「振袖小姓捕物控」

 

※ 累風庵閑日録:

『振袖小姓捕物控 第一巻 黄金の猿鍔』 島本春雄 捕物出版

fuufuushi.hatenablog.jp



※※「ふり袖小姓捕物帖」(蛇姫囃子)というタイトルで1961年に東映が製作したものがあるが、振袖小姓の捕物帖というコンセプトは似ていても島本作品の映画化ではなかった。

「ふり袖小姓捕物帖」東映(1961)

《顔も包まず、然も曙色千鳥の大振袖での尾行では、感付かれないのが不思議なくらいだ。(…)成程、江戸には振袖小姓の数も多い。(…)だから、江戸の町を大振袖の袂を刀の柄に抱いて往き来する御小姓が珍しいとは云えぬ。然し、朱房の十手を小太刀の脇に挟んでいる御小姓髷は、この広い江戸にただ一人、振袖美弥太郎あるのみなのだ。》(妖棺伝)

 

「人間と言う厄介な代物にゃ、それぞれ人に言えねえ秘密が多いもんだ。何時何処でどんな拍子で死んでも口を割れねえ様な、例え人殺しと間違えられても白状出来ねえ様な場面にぶつかるかも判らねえ。」(地獄駕籠)

 

 

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