明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『花婿三段跳び』 中野実

花婿三段跳び中野実、田中比左良・画

1948年(昭23)7月~1949年(昭24)4月、雑誌「富士」連載。

1952年(昭27)東方社刊。

 学卒の立花と土岐は就職口が見つからず、結婚相談所主催の集団見合のサクラのバイトをしている。ある時、立花は「エキストラ・ハズバンド」という契約で偽装夫婦を演じて、資産家の叔母から資金を得る企てに加わるが、夜は夜勤でいつも不在という設定になる。彼には近所の物資交換所(いかにも配給制の戦後らしい)の娘や田舎から来た幼馴染のスポーツ嬢などが思いを寄せ、契約の偽装があやうくバレそうになる。中野実の語り口は、軽口の応酬が身上で、感情的にならないようにさらりと流れて行く。松竹で映画化されることになって、主演候補の男女の人気投票で雑誌社が大いに盛り上がったが、実際にはヒロインの主演(木暮実千代)が叶わず、竜頭蛇尾になってしまったようだ。☆☆☆

 

花婿三段跳び中野実、田中比左良・画2

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/3561661/1/21

https://dl.ndl.go.jp/pid/1643040

雑誌連載時の挿絵、および単行本の表紙絵は田中比左良。



花婿三段跳び中野実、田中比左良・画3

《土岐の後から姿を現したのは、隆作の娘ミツ子。ずば抜けて背が高く、衣もん竿のやうな肩幅、靴は十一文、といふと怪物に近いが、案外顔は子供っぽく、スフ入りのグレーのスーツに、鉄ぶちの眼鏡、すゝけて野暮ったいながら、田舎にはよくあるインテリ女性。》(二つの世界)

 

「万難を排しても行くべきだよ。日本のためだ。われわれは戦争もまけて、連合軍に占領されてゐるけれども、日本がなくなったわけぢゃあないんだ。大いにがんばってくれよ。(…)その頃はテレヴィジョンがあるだらうから。」(二つの世界)



『お二人ともいゝ御機嫌のやうですね』

『はあ』

『何かうれしいことでもあったんですか』

『自暴(やけ)酒です』と立花。

『あんまり褒めた話ぢゃあありませんね』

『褒められようと思って酒を飲む奴はゐないでせう』

『お酒を飲んで誤魔化せると思ふのが間違ひだと同じに真理ですね』(花婿新記録)

 

 

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