明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『黄金仮面』 江戸川乱歩

黄金仮面:江戸川乱歩

1930年(昭5)~1931年(昭6)雑誌「キング」連載。

1935年(昭10)平凡社刊、乱歩傑作選集第1巻。

1948年(昭23)11月~?、雑誌「冒険世界」連載(少年向け)

1970年(昭45)ポプラ社、少年探偵江戸川乱歩全集27(少年向け)

 

黄金仮面:江戸川乱歩小松崎茂・画1

 江戸川乱歩の怪人ものの代表作の一つ。発表当時はまだ「ネタバレ」への意識など皆無だったのだろうが、目次を見ただけで、フランスの怪盗アルセーヌ・ルパン対明智小五郎の話だとわかる。仮面にマントの怪人の登場は人々の目を奪うほどの強印象を与えるが、なぜわざわざそんな恰好が必要だったかは怪人ものとしては常に不問とされる。

 

黄金仮面:江戸川乱歩小松崎茂・画2

 ルブランが「ルパン対ホームズ」を書いたように、ルパンがフランスから日本へやってきて、名探偵明智小五郎と対決する図式に当てはめたのだろうが、どうしても「借り物」のヒーローは本物の作品よりも見劣りがしてしまう。ルパンに黄金仮面を被せることによって、複数の手下たちを仮面の影武者のように使うのだが、それでもルパンの信条である「人を殺さない」ことがここでは起きてしまった。

 

黄金仮面:江戸川乱歩小松崎茂・画3

 ルパンを愛する日本人令嬢の名前が不二子というのも、ルパン3世の峰不二子を予見させるようで面白い。本当は彼女を最後までルパンから切り離すべきではなかったと思う。連載の途中で「フランス大使」がなぜか匿名の「X国大使」に切り替えたのも意味不明。怪人ものとしては、乱歩特有のエログロ味が極力抑えられていた。ポプラ社で出された少年向けの「黄金仮面」は小林少年を割り込ませたリライト版だという。☆☆

 

黄金仮面:江戸川乱歩柳瀬茂・画

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1170869/1/3

https://dl.ndl.go.jp/pid/1793803/1/8

https://dl.ndl.go.jp/pid/12908758/1/3

冒険世界の挿絵は小松崎茂ポプラ社版の挿絵は柳瀬茂

 

黄金仮面:江戸川乱歩小松崎茂・画4

《この世には、五十年に一度、或は百年に一度、天変地異とか、大戦争とか、大流行病などと同じに、非常な奇怪事が、どんな悪夢よりも、どんな小説家の空想よりも、もっと途方もない事柄が、ヒョイと起ることがあるものだ。》(金色の恐怖・書き出し)

 

《恐ろしい程無表情な黄金仮面、鋼鉄機械の様に傍若無人で正確無比の腕力、その上にこの不思議な声だ。まさか、生命のない人造人間が、あんなに自由自在に活動する筈はないのだが。》(怪しき声)



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