明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『この日美わし』 大林清

この日美わし:大林清

1959年(昭34)東京文芸社刊。

 戦後昭和期の紋切り型メロドラマの一つ。登場人物の設定が今どきの少女コミックに通じるのと、プロットの組立てにやや安易すぎる面もあった。

 満州で孤児になった兄妹。帰国後、兄は若手作曲家として売り出し、妹は美容学校を経営する女傑の秘書として働く。彼らはこの女傑に世話になったので頭が上がらないが、彼女は性格的に強引で高圧的な言動で彼らの心まで支配しようとする。妹の朝美がヒロインだが、これに陰湿な性格の自分の甥を結婚させようと画策する。朝美には別に相思相愛の恋人和也がいるが、彼の方は、勤務先の収賄事件に巻き込まれた上に、乗る予定の連絡船の沈没事故で、自分自身を遭難者として社会から身を隠すことになる。「覆水盆に返らず」の状況をいかに戻せるのか?の過程は飽きさせない。非力で苛められながらも健気に生きるヒロインの姿は同情を誘う。☆

 

この日美わし、広告

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1647704/1/3

 

この日美わし:松竹 (1962)

※「この日美わし」は松竹で映画化されている。しかし原作とはまったく異なる作品のようになっている。相思相愛の主人公たちの名前だけを残して、他の全部、つまり場所も事象も人物もことごとく再構築したものだった。個人的にはこれが「映画化」と言えるのか、と思えるような始末だった。

 

松竹・作品データベース「この日美わし」(1962)

www.shochiku.co.jp



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