
1926年(大15)サンデー・ニュース社刊。「探偵趣味叢書」第2編。
作者の春日野緑(かすがの・みどり、1892~1972)は大阪毎日新聞の社会部副部長だったが、2歳年下の江戸川乱歩に働きかけ、1925年(大14)に「探偵趣味の会」を発足させ、機関誌として「探偵趣味」を発刊した。これには当時の探偵作家のほとんどが参加し、昭和初期の探偵小説の隆盛の先駆けとなった。
春日野は同誌やサンデー毎日などに短篇を発表したが、ここに収めた「Bの亡霊」「真珠の値」「一本脚の徳さん」など数篇は、いずれも事件の発生とその捜査というよりも、事件の周辺に関わった人々の心情を語るスタイルで、探偵風味とも言え、少し怪奇の香りも加味して軽妙だった。彼は英米の探偵雑誌事情にも詳しく、翻訳も手がけている。☆☆
春日野の本名は、星野龍猪(ほしの・たつお)だが、類似名の作家で、しかも同年代の保篠龍緒(ほしの・たつお、1892~1968)(本名星野辰男)がいる。こちらは文部省の役人との二足の草鞋で、アルセーヌ・ルパン作品の翻訳者として有名だが、自作の探偵小説もある。
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/916864/1/4
《しかし乍ら、わが国の探偵小説界は最近に至って画期的の進歩を示し、特殊の作品について云へば、むしろ欧米先輩国のそれを凌駕してゐるの感さへあって、純文芸と何等区別すべきものでなく、高級文芸として否応なしに識者の間に認められるに至った。》(探偵趣味叢書の発行について)
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