明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『いいわけ夫人:舶来小咄集』 玉川一郎

いいわけ夫人:玉川一郎

1955年(昭30)久保書店刊。

フランス伝統の「小咄」いわゆるコント集。戦前の昭和13年(1938)にすでに『弁解夫人:風流紅毛短編集』というタイトルでほぼ同内容のものが出版されていた。そこでは一篇ごとに作者名が記載されていたが、戦後の新版では省かれている。

内容からすると、取るに足らないような話の連続なのだが、その限られた原稿枚数の中で、如何に話を切り出して読者の注意を惹きつけるかが、その作者の腕の見せ所なのだ。

弁解夫人:玉川一郎

ワンフレーズの言葉の勢いとか、魅力の持たせ方とかが興味深かった。大半が情話がらみの艶笑譚なのだが、戦前版においても発禁や伏字にならなかったのは、「洋物」に関しては検閲がやや寛容だったのかもしれない。

 

各コントとも最初の一・二行を読んだだけで、フランスの世間話の世界に引き込まれてしまうのは、催眠術師の導入術のように巧みだった。☆☆

 

いいわけ夫人:玉川一郎、上西憲康・画

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1224002/1/3

戦後版のカットは上西憲康。

 

《自惚(うぬぼれ)のない女なんてものは蹄(ひづめ)のない馬よりも珍しい。ましてや、自惚だけが生命線である職業婦人(ミディネット)達の間では、お隣りの西ドイツの動静なんかの事をデカデカと取扱う一流紙よりは、このエコ・ド・ヴォワザン(隣人の噂)紙の方がはるかに切実であるのはやむを得ない。》(美人投票

 

 

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