
1956年(昭31)東京文芸社刊。
1963年(昭38)春陽文庫
ドタバタ喜劇の一品。終戦直後の中野実の作風は人間の生き方を問い直すような深みが見られたが、戦後10年を経た復興期に入ると、世相のゆとりとともに軽妙なコメディを量産するようになったような気がする。
バラック建ての長屋造りの商店街の一角にヒロイン澪子(みおこ)は妹と共同で歯科医院を経営している。妹が早々に婚約者を見つけたのだが、彼女の方は見合にも乗り気でなく、周囲を騙すため、架空の恋人の存在を公言し、偽装デートの相手として偶然知り合った調査会社員の塚本に頼み込む。その際の言動のどこまでが本気なのか偽装なのか、双方ともに混乱してしまう。一方で、周囲の人間たちも計略を立てて出会いのお膳立てをしたり、騙す方は平気で騙し、騙される方はいとも簡単に騙されて、収拾がつかなくなる。当時の政界の時事ネタなども頻繁にはさみ込まれ、結果、終わりよければ、で幕となる。かなりわかりにくい展開だった。☆
1954年に松竹で映画化された。

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1645422/1/3
https://dl.ndl.go.jp/pid/1649604