
1958年(昭33)光風社刊。
主人公の鹿沢は、新宿の歓楽街にある喫茶店でバーテンとして働き、終業後は柔道場で汗を流す真面目な青年だが、人に話せない暗い過去があった。新宿は暴力団がはびこる無法地帯で、喫茶店がチンピラがたむろして商売にならないことを警察に相談するが、逆効果になる。そこで町の防犯協会を標榜する「白雪会」に加盟すると潮が引けるようにたちまち彼らは手を引いた。

鹿沢は通っているバーの女マリに好意を抱くが、その恋敵は暴力団の桑山で、彼はマリの弟の不良少年勝男を麻薬密売グループの手先として使い、勝男も彼の存在に憧れている。喫茶店の女店主の息子谷雄とは、美少女晴美を巡って争っている。しかしある夜、谷雄は路地裏で死体となって発見される。・・・

戦後の新宿のハモニカ横丁や花園神社裏の都電の引き込み線周辺の飲み屋街など、社会の底辺で生きる人間模様と反社会組織の断面を描いていて興味深かった。実態は小説のように割り切れるものでなく、複雑な糸のように絡みあったものだろうと推測されるが、小説で覗けただけでも十分だと痛感する。この小説は1959年東映で映画化された。☆☆

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