明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『幽霊旅館』 押川春浪

幽霊旅館:押川春浪

1907年(明40)本郷書院刊。

海底軍艦』で有名な押川春浪(1876~1914)による冒険怪奇譚集。表題作『幽霊旅館』の他、中篇『巌窟の海賊』と短篇8作を収める。彼はすでに24歳で代表作『海底軍艦』を著し、その後は雑誌編集者を兼務しながら創作を続けたが、38歳で早世した。少年少女向けの海洋冒険譚や怪奇冒険譚が多い。

『幽霊旅館』はロシアの荒野を旅する日本人画伯が遭遇した旅館での恐怖体験に加えて、そこから逃げる途中で山賊に遭い、有金をすべて奪われたという話を聞いて、語り手自身が十分な準備を整えてその旅館に乗り込んでいくという展開。ロシアの平原の荒涼さと広大さの中で怪奇趣味を巧みに描いていた。

『巌窟の洞窟』はイタリア西海岸が舞台。日本人実業家海島氏は古城を買い取り、修繕して居住するが、人知れず日本城と呼ばれるようになった。息子の浪丸少年は、その付近の島の領主一家が海賊に乗っ取られ、令嬢も誘拐され、苦闘しているラレー少年を助けて、島を奪回しようと活躍する。

 春浪の文体にはもはや明治臭さはなくなり、翻訳物をそのまま創作に移植したようなバタ臭さがあって現代的だった。☆☆☆

 

幽霊旅館:押川春浪

国会図書館デジタル・コレクション所載。

https://dl.ndl.go.jp/pid/888579

口絵作者は未詳。

 

 

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