明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『自殺を売った男』 大下宇陀児

自殺を売った男:大下宇陀児

1958年(昭33)光文社刊。

 薬物中毒者のヤクザな男、四宮四郎が一人称で語るミステリー。生きている意味が見出せないと感じて、彼が伊豆で自殺を図った矢先に、別荘に来ていた社長令嬢に助けられ、自邸の下男兼犬係になる。ある時、訪ねてきた謎の男に、自殺を装って死ぬ代わりに東京から失踪するようにと大金で誘惑される。カノ女の美容師ユキ子のために田舎の店舗が売りに出されていたのを機に出発する。のんびりした日々が続いたが、薬物中毒でクスリをどうしても入手する必要から四宮は密かに上京する。世の中から消えたはずの彼が出くわしたのは・・・

 クスリと賭け事以外に何の意義もない自殺願望者の生活と感情が克明に描かれている。単なる偽装工作であるはずの企みが、知らず知らずのうちに凶悪な犯罪へと発展する動向に妙味があった。側から見れば凡庸なカノ女が探偵役として推理し、甲斐甲斐しく動き回るのも微笑ましかった。☆☆☆☆

1958年松竹で映画化された。

自殺を売った男:松竹(1958)

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1646958/1/3

 

自殺を売った男:松竹(1958)

《だから、おれのサヨナラは、ユキ子の身のためにもなるという理屈が成立つ。おれの方はというと、アッサリ死んでしまってやるだけだ。借金をしたままになっている不義理なとこもないじゃない。けど、生きていたって、べつにおもしろいことのある世の中でもないのだ。》(断崖)

 

 

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