
1957年(昭32)同光社出版刊。
いわゆる「怪傑頭巾物」の中篇2つと『剣豪にっぽん』などの短篇3つを収める。書名タイトルは最初の『乱れ白菊』の惹句でしかない。葵の御紋を散りばめた頭巾を被る謎の剣士「まだら頭巾」が活躍するが、ほとんど鞍馬天狗の類型でしかない。無実の科で切腹に追い込まれた九州大村藩の領主の娘菊姫が老臣とともに将軍家治の鷹狩を機会に一矢報いようと挑むが、多勢に無勢、命の間際にまだら頭巾に救出される。安価な娯楽時代劇の原作で、読んで痛快だがそれ以上ではない。1957年に松竹で映画化された。☆

もう一つの『夜叉街道』でもやや年代が下がるが、謎の「まぼろし頭巾」が殺害された道場主の娘を助けて、深山幽谷に眠る秘宝を捜し出す。これは筆致から見ると少年少女向けの雑誌に発表されたようにも思えた。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1645912/1/3

《衝立のかげから、ふらりとあらわれたのは、異形のみなりの浪人者だったからである。まだらの頭巾で顔をつつみ、背中が黒、前が白の羽二重を着流し、同じ長さの太刀を二本、腰におびていた。しかもひとつは白鞘、もうひとつは黑鞘である。いや、それよりも、役人をあっとうならせたのは、頭巾のまだらこそは、大小無数の葵の紋ではないか。》(葵の紋)