
1949年(昭24)6月~1950年(昭25)5月、雑誌「りべらる」連載。
1951年(昭26)東方社刊。
終戦直後の東京。新時代の教育理念を抱いて自由学院を運営する院長の宮部、その実娘の三紀はそこの専門部の学生だった。普通部は3年制の女子高、その上の専門部は男女共学になっている。三紀は普通部3年の千恵子と仲良しだったが、千恵子の身体の異変を境に溝が出来る。彼女はちょっとした過ちで妊娠してしまったのだ。戦災孤児で伯父の家から通う彼女は、ひとりで出産か中絶かを悩む。専門部の男子学生達也は彼女から下宿にかくまってほしいと頼まれて断われず、奇妙な同棲生活が始まる。

彼女を妊娠させたのは美術講師の峰だったが、彼は戦場で後頭部に受けた傷が原因で、性的衝動の発作が顕れても前後の記憶が途切れるという症状だった。達也はその場面を目撃し、院長は峰に休職療養を勧告する。
終戦後の混乱期の若い女子学生たちの生態を明朗かつあからさまに描いていたが、院長をはじめ、教師たちや校医の課題を見つめる真剣な姿にも好感が持てた。☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1727383/1/9
https://dl.ndl.go.jp/pid/1642876
雑誌連載時の挿絵は、岩田専太郎および高木清。

《峰は彼女の心のなかで、日一日と大きな存在となって行ってゐた。それは女が、自分の処女をあたへた男に対して抱く、一種の依存感のやうなものでもあったが、同時に、相手の男の愛情を信じることによって感じる自尊心のやうなものでもあった。》(二つの心の章)