
1950年(昭25)~1951年(昭26)雑誌「小説倶楽部」連載
1956年(昭31)文芸評論社刊。
冒頭からの「この男十万円で売ります」というポスターを身体に掛けて、銀座の街を歩く男の姿は印象的だ。結核で病臥している恋人の治療費を捻出するための身売り策だったが、最後に声をかけてきたのは老科学者で、「透明人間」になるための薬の実験台として彼を買ったのだった。主人公の女々良三四郎は、柔道家ではない普通の青年だが、短時間でも透明体になることで自信をつけて行く。恋人ルミが住むボロ屋には、戦災孤児の甲助少年が住みついており、何かとルミを助けているが、この少年の身のこなしの素早さのほうこそ忍者のようで、その性格とともに生き生きと描かれていた。

薬で透明になること自体、すでにSFなのだが、ここでは実験段階のせいか、痛快なアクションはあまり出て来ない。乱歩の少年探偵団シリーズに『透明怪人』という作品があるが、そちらの方が、別のトリックではあるものの、怪現象としての迫力があった。

物語の終盤に入ると、銀座にあるキャバレーを含むビル全体を支配する謎の女傑紋田龍とその一味の極道ぶりをエログロ趣味を交えて描き始め、結果的に尻切れトンボで巻を終えていた。それぞれの要素は面白いのだが、話としてまとまらない点はどうしようもない。1955年に東映で映画化されている。☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1790609/1/19
https://dl.ndl.go.jp/pid/1646077
雑誌連載時の挿絵および単行本の表紙絵は富賀正俊。
※関連記事:
北原尚彦「映画化までされていた! 透明人間SF『忍術三四郎』」―
―SF奇書天外REACT【第23回】(1/2)[2012年5月]
@Web東京創元社マガジン