
1948年(昭23)5月~1949年(昭24)6月、雑誌「婦人生活」連載。
1952年(’昭27)東方社刊。
発表された時期が終戦後丸3年経った頃、雑誌の紙質も最低限で、文字も挿絵もかすれていた。結婚難の世相を反映して、ユーモア小説界には、「結婚」「婚約」「花嫁」などのタイトルが氾濫した。食糧配給制などが安定して来て、人々の生活にも希望が見えてきたのかもしれない。

この小説の三人のヒロインは同じ女学校を出て、一人は乃婦子で法科大学生、一人は輝子で医者の卵、もう一人の茂莵子は音大でヴァイオリンを専攻中。女学校で彼女らの恩師だった角野女史が結婚相談所を開業し、縁談の押し売りを始めたことから身辺が慌しくなる。彼女らは三人とも恋人探しに切迫した状況にはなく、日々を送っている。まだ恋愛遊戯のレベルであり、相手となる青年たちを含めて、喜怒哀楽のうちの怒と哀が抜けた喜楽な明朗ドラマだった。中野実のこの数年前の作風と比べると毒気が消え去り、無味無臭になったような気がする。☆

この小説は1955年に松竹で「三人娘只今婚約中」というタイトルで映画化された。脚本は橋田寿賀子。

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2324795/1/7
https://dl.ndl.go.jp/pid/1642956
雑誌連載時の挿絵および単行本の表紙絵は田中比左良。

「だって、お父さん、結婚ってものは女にとって一番大切なことじゃあないの。結婚の時期について、あたしは理想を持っているのよ。」
「どんな理想だ。」
「日本からヤミ屋や集団強盗や浮浪児がなくなって、天国のような社会が生れたときだわ。」(ボンヤリ特集)