
1918年(大7)真文社刊。
作者の橘刺紅(たちばな・しこう)については、大正期の文筆家として著作が数点見られるが、小説家ではなかった。『白衣の女』は英国のウィルキー・コリンズの名作と同じ題なので、当初翻案かなと思ってみたが、設定がかなり異なっていた。しかし「訳著」となっていることから、何らかの外国小説の翻案であろうと思われた。
語り手は若い貧乏医者で、名前を匿して竹林としている。彼が友人の診療所で代診の医師として過ごす間に、急患で呼ばれた邸宅の瀕死の令嬢と死の間際に結婚するよう依頼される。その報酬として大金を約束されるが、彼は中途で悪事に加担するのを嫌い、格闘に至る。しかし毒薬のため昏倒し、外国船で連れ去られる。・・・
物語の筆運びは達者で、謎が謎を呼ぶ展開に引き込まれるが、語り手が再会した相手がことごとく初対面であるかのような態度を示し、ついには自分以外の関係者がすべて敵ではないかという想念に至る。それを克服できたのは、自分と結婚したはずの令嬢への恋情であった。謎は氷解するが、竜頭蛇尾の感があった。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/907954/1/2