
1954年(昭29)1月~12月、雑誌「読切俱楽部」に連載。
1954年(昭29)東方社刊。
北村小松(1901~1964)は戦前戦中期まで映画のシナリオを数多く書いていた。戦後はユーモア小説を中心に活動した。雑誌連載では絵物語風に色刷り挿画を縫うように本文が配されて、一部では印刷が重なって読みにくい個所も多々あった。表題の『幸福は虹の色』も終戦直後の時期のホームドラマで、当時主流だったラジオドラマとしてもいいような明朗軽快な一篇だった。

女性の立場でパイロットの資格を取りたいと願うヒロインの美保子の隣家に外人夫婦が引っ越してくる。米国の航空会社の極東支配人フィッシャー氏とその妻だが、外人慣れしていない住民は右往左往。飼い犬失踪事件や自家用車の火災、泥棒や浮気疑惑事件などで大騒ぎが続く。他愛のない話ばかりだが、戦後間もないのに米国への親愛度が人々の中に深まって行く様子がうかがえた。

併載の短篇「郷愁」は作者が愛して止まない横浜の戦前への郷愁と戦後の復興の様子を描いていて興味深かった。「Q公」は大学の研究室の片隅で寝起きする語り手と拾った白猫との交流、その他の短篇も人の気をそらさせない語り口の絶妙な味わいに特徴があった。☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1723119/1/15
https://dl.ndl.go.jp/pid/1354070/1/3
雑誌連載時の挿絵は土井栄。
《横浜に関してだけの事じゃない。アヴァンゲールの悲しさだよ。我々日本人全体の宿命みたいなもんじゃないかなァ……誰かのいい分じゃないが、日本はどこか腐っている。宗教は虐待され両親は軽蔑され愛国心はお笑い草になりストライキは日常茶飯事だ。法と道義は地に堕ち人間は道徳的にも精神的にも社会的にも恥知らずになっている……ってね。》(郷愁)
『白猫別荘』 北村小松
『男は沢山いるけれど』 北村小松