明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『猫間明神』 高山怨縁

猫間明神:高山怨縁

1917年(大6)大川屋書店刊、「怪談百物語」第8巻。

大川屋書店では「怪談百物語」をシリーズとして100巻出すつもりだったらしいが、計10巻止まりとなった。(下掲の広告参照)

 

この巻では、表題の「猫間明神」のほか「水沢の化け地蔵」と「白金の怪猫」の3篇を収める。著者の高山怨縁(おんえん?)といういかにも怪談作者のような名前は、以前にも『幽霊の手引』を出しているが、このシリーズ用の便宜的な筆名として使った作家だったようだ。

 

猫間明神:高山怨縁

「猫間明神」の名前は江戸時代の史実としても伝承されている。猫とは直接の関係はない。奥州白河の在にある薮木村と猫間村との間にある猫間明神の祠に立つ大楠の巨樹が因縁という。長年の間ご神木として大切にされていたが、時々不心得の大工や神主のために、枝を切られそうになって、天罰が下る。有名になったのは、豪商紀伊国屋文左衛門が、伊達藩主から普請の依頼を受けて、立派な木材を探したところ、この巨樹に目をつけ、多くの人手を集めて切り倒したことにある。その作業の最中から不審な事故が連続し、奇妙な叫び声や天変地異が起きた。そしてそれを契機に紀文の商売は不振に陥り、最後は病死に至った。

 

話の中の薮木村とは、現在の福島県西白河郡矢吹町のことと推定される。猫間村のことは不明だが、Google map で検索すると、「明新」という地名がある。その一角に廃れた神社らしき表記もあるので、その痕跡だろうと推測する。

 

「水沢の化け地蔵」は上州榛名村の外れにある地蔵尊が古狐によって物の怪となる話。民話か昔話のような鄙びた親しみやすさがあった。

「白金の怪猫」は江戸白金の旗本家に起きたお家騒動で、飼い猫が殺された後でもなお主人の身を助けようと現れる怪異譚。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。

https://dl.ndl.go.jp/pid/906321/1/1

口絵作者は未詳。

 

「御神木かい罰が当るよ」

「べら棒奴、バチが当れば太鼓で受けらあ、御神木も糞もあるかい」(猫間明神)

 

《萬物の霊長たる人間は、生き物はどうしても可愛がってやらねばならにもので有ります。又人を陥れやうとおするは極めて善くない事で、悪には悪の報いは必ずあるもので、こんなつまらぬ話からもとって貰ひ度いと思ふ。》(白金の怪猫)



※『幽霊の手引:怪談百物語』 高山怨縁

ensourdine.hatenablog.jp

怪談百物語

 

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