
1956年(昭31)東方社刊。
怪しい弁護士手塚竜太の活躍する連作短編集。戦前昭和期に書かれたもの。ここでは7篇と他の短篇2篇が収められているが、専門的なサイト「甲賀三郎の世界」にある記事『私の甲賀三郎・雑記録3 第三話 怪弁護士・手塚龍太に迫る』によると手塚竜太だけで9篇あるという。
興味深かったのは手塚竜太の容貌のことで、各篇ごとに丁寧に繰り返し語られている。ひと言で「醜男」なのだが、鼻の大きさからするとシラノ・ド・ベルジュラックを連想させる。各話ともその事件の関係者が語り手となって、途方に暮れるか、諦めるかという局面で彼が登場し、自信満々の態度で解決するといった、言わば「トンビに油揚げ」タイプの探偵のスタイルだった。しかも自分の利益を抜け目なく確保する手立てには苦笑するしかない。これまで読んだ甲賀作品も少なくないが、この「手塚物」に関しては話の進行が緩慢で眠くなることがあったのは、読む側の加齢のせいかも知れない。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1353864/1/3
表紙絵は岡村夫二。

《彼は人並より背は低いが、青黒い大きな顔で、而もその顔の半分以上が巨大な先の曲った鼻で占領されていると云う頗る異相な男で、チョコンと指揮杖を抱えている所は、何となく滑稽にも見えるのだったが、彼は手塚竜太と云って、どうして油断のならない男だった。》(傍聴席の女)
※甲賀三郎研究サイト 「甲賀三郎の世界」
※参考過去記事:
『死頭蛾の恐怖』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2025/09/13/231826
『死化粧する女』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2025/07/25/201901
『体温計殺人事件』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2023/12/18/204656
『神木の空洞』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2023/12/01/105937
『姿なき怪盗』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2023/10/14/171901
『隠れた手』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2023/04/28/192551
『電話を掛ける女』 甲賀三郎
https://ensourdine.hatenablog.jp/entry/2023/01/30/192544