
1935年(昭10)サイレン社刊。
1948年(昭23)まひる書房、少年少女文庫選。
「幽霊賊」というタイトルからすれば怪盗物という定石通り、悪徳富豪の隠し場所から予告状の時刻に重要書類が盗まれる。しかも屋敷には外から出入りした形跡は全くない。続いて令嬢良子の誘拐や精神病院に閉じ込めていた研究者が逆に連れ去られるなど、富豪を追いつめるのだが、旧悪の露顕を恐れる彼は警察に通報することなく、私立探偵の朝日明太郎に娘の救出を依頼する。

この辺から小説は、怪盗物から復讐物に大きく梶を切る。それなら何もわざわざ「幽霊賊」などと名乗らせる必要はなかったのだし、その復讐のやり方にしても結局相手をどうしたいのかの焦点がぼやけてしまった。
作家の三上於菟吉は、同時期に代表作の一つ「敵打日月双紙」を書いていて、これはマッカレーの「双生児の復讐」の翻案であったが、よくまとまっていた。「幽霊賊」にもその影響が及んだものと思われるが、乱歩などに較べればタガがゆるんだ造りに感じられた。☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1208554/1/3
https://dl.ndl.go.jp/pid/8346833
まひる書房版の口絵、挿絵は高木清。
『敵打日月双紙』 三上於菟吉