
1917年(大6)大川屋書店刊。
怪談百物語のシリーズの一冊。表題作「船幽霊」のほかに「死人喰ひ」と「お清が淵」の計3篇を収める。
主人公の武雄は両親が航海に出て行方不明となったため、叔父夫婦に育ててもらっていた。叔父も船員で、武雄も将来船員志望で、商船学校に通っていた。ある時航海から帰った叔父から船幽霊に遭遇したという話を聞いた。その後叔父は病気で亡くなったため、生計のため武雄は学校を中退し、船員に働き口を見つけた。給料はいいが、なぜか行動制限が多い船で、行先もはっきりしなかった。霧の出る晩には乗組員が強制的に船室に閉じ込められる。その謎を解明しようと、彼は荷物の中に隠れていたが、幽霊たちがある部屋からゾロゾロと出て、接舷した別の船に乗り移って行くのが見えた。彼の乗っている船が幽霊船だったのだ。・・・

ネタバレになるかもしれないが、霧の中に幽霊を登場させるといういわゆる「立体画像投影」の技術は、21世紀の最近でこそ商業広告などまでに一般化されてきたのだが、この作品のように、詳細は明らかにされないが、何らかの技術で動く立体画像を生出させるという着想は、SF的で興味深かった。

海洋冒険小説は、日本が日清・日露の戦争を経て、海外に版図を拡張していった時代にはかなり親近感のあるジャンルとして作られ、読まれたのだと思う。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/905096/1/2
口絵画家は不詳。