続編『怪婦丸亀大仇討』 春帆楼白鷗
1910年(明43)積善堂刊。
1916年(大5)樋口隆文館刊。
石川一口(いっこう)は江戸時代から続く講釈師の石川派の五代目として明治後期に活躍した。生没年、本名など不詳。口演速記本は70数点に及ぶ。
尼崎里也(あまがさき・りや)は江戸中期に実在した人物。2歳の時に父親が殺害され、母親も病死したため、伯母の手で育てられた。成長してから、逃亡した親の仇を探して江戸に出て、剣術を修め、女手ながらも見事仇討を果たした。
この講談では、母親譲りの美貌でありながら、男まさりの怪力の持ち主という設定で、小娘の身で単身江戸に旅する。途中でゴマの蠅に狙われ、逆に投獄され、死刑前夜に脱走し、箱根の山中で仙人に秘術を授かり、女乞食として放浪するところを永井一刀斎に助けられて江戸に到着する。ファンタスティックな脚色の多様さと語り口の流麗さで読む者を引きつけて面白い。
続編では仇探しが本格化する。講釈師の弟子と思われる春帆楼白鷗(しゅんぱんろう・はくおう)の口演筆記本が残されている。ほとんどが江戸での動向だが、喜劇的な騒動も加味されて退屈させない。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/889415
https://dl.ndl.go.jp/pid/909356
口絵は正編が鈴木錦泉、続編が歌川珖舟。
*参考サイト:
コトバンク:尼崎里也(あまがさき・りや)
https://kotobank.jp/word/%E5%B0%BC%E5%B4%8E%E3%82%8A%E3%82%84-1050699
烈女尼崎里也宅跡のこと
https://blog.goo.ne.jp/sanuki-marugame/e/feca5f736c9a4fe146aab8ee4967ee56
安達吟光画 【古今名婦鏡 尼崎里也女】明治19年(1886年)