明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『この世の花』 北條誠

1956年(昭31)東京文芸社刊、第1巻~第3巻。 1960年(昭35)東方社刊、上下2巻。 1963年(昭38)春陽堂文庫、正続2巻。 戦後の1955年(昭30)にラジオ・ドラマとして放送され、大評判となった作品の原作である。単行本として合わせて900頁を超える大長…

『美人冤罪死刑:探偵実話』 狂花園主人

1896年(明29)11月~1897年(明30)11月 雑誌「人情世界」連載、日本館本部発行。 (びじんむじつのしけい)狂花園主人も版元日本館所属の記者作家と思われるが、生没年を含め詳細は一切不明。この作品も連載後に単行本化されたようだが、現在デジタル・コ…

『若い真珠』 小糸のぶ

1959年(昭34)1月~1960年(昭35)2月 雑誌「読切倶楽部」連載。 1960年(昭35)東方社刊。 小糸のぶ (1905-1995) は教職のあと、戦後昭和期の約20年間に恋愛・ロマンス作家として旺盛な活動をした。筆致にくせがなく、読む者にさわやかな印象を与える。…

『生首於仙:探偵実話』 恋菊園主人(高橋翠葉)

1896年(明29)6月~12月 雑誌「人情世界」連載、日本館本部発行。 (なまくびおせん)古書界では稀覯本とされる明治中期の娯楽文芸誌「人情世界」の創刊時からの連載小説の一つである。作者の恋菊園主人(れんぎくえん)はこの雑誌の主筆高橋翠葉(すいよう…

『明暗三世相』 直木三十五

1932~33年(昭7~8)改造社刊。上下2巻。直前まで朝日新聞に連載されたものを挿絵とともに出版。(デジタル・コレクション収容は上巻のみ) 1935年(昭10)春陽堂刊。日本小説文庫367~9、前中後全3篇。 直木賞に名前を残した直木三十五なのだが、これま…

『春姿からす堂』 山手樹一郎

1959年(昭34)新年号~1960年(昭35)12月号、雑誌『読切倶楽部』連載。 1961年(昭36)桃源社刊。 雑誌連載当時から絶大な人気を誇った『十六文からす堂』シリーズは1953年から1965年までの延べ13年間にわたって掲載された。その都度単行本にまとめられ…

『鬼小町:探偵実話』 菱花生

1901年(明34)三新堂刊。前後2巻。作者の菱花生(りょうかせい)については生没年も不明、明治後期から大正にかけて探偵実話や悲劇小説を書いている。これにも探偵実話の副題をつけていて犯罪実録を小説風に書き記したもの。地の文は明治期そのものの漢文…

『白髪鬼:情仇新伝』 黒岩涙香

1893年(明26)町田浜雄刊。 1934年(昭9)春陽堂刊。日本小説文庫 No.349 1957年(昭32)光文社刊。黒岩涙香代表作集第2巻。 原作は、イタリア風の名前ながらも英国人小説家のマリー・コレリ(Marie Corelli, 1855-1924)による『復讐(ヴェンデッタ)』で、1…

『黄昏の悪魔』 角田喜久雄

1950年(昭25)矢貴書店刊。新大衆小説全集第6巻所収。 1957年(昭32)桃源社、推理小説名作文庫。 戦後混乱期の東京と伊豆を舞台にしたサスペンス小説。満州から戻った身寄りのないヒロイン江原ユリの身辺に次々に迫る脅迫じみた婚姻届の強要と殺人事件。…

『徳川家金蔵破の件』 菅谷与吉・編

1893年(明26)日吉堂刊。この作品の作者名は明記されていない。奥付に編者として記されたのは版元の社主だった。明治20年代は社会体制の安定、言文一致体の浸透、印刷技術の向上などによって多様な出版文化が花開いた時期だった。特に探偵小説はまだ犯罪…