1915年(大4)樋口隆文館刊、前後終編全3巻。
明治大正期の長篇小説の大家の一人、渡辺黙禅の一作。新聞小説を各紙に何本か掛け持ちで連載していたらしく、同じ年に単行本として何点もの長篇(2分冊、3分冊)を出していた。作風は多数の人物が入り乱れる波乱万丈型の活劇譚が多く、涙香によって翻案紹介された19世紀末の英仏の新聞小説(フイユトン)に通じるものがある。
当時の清国から朝鮮、日本を股に巧みな変装術で強盗を繰り返す一団によって破綻の憂き目を見た実業家一家は、火災にも遭遇し困窮に追い込まれる。父親は朝鮮の山奥での金鉱探しに起死回生を掛ける。姉娘は誘拐されて外国へ人身売買されそうになる。物語の筋立てが荒く、書き飛ばしも感じるが、筆致には吸引力があった。タイトルは作中に出てくる朝鮮全羅南道沖の竹島灯台に造られた人を監禁するための岩窟を指す。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/910367
https://dl.ndl.go.jp/pid/910368
https://dl.ndl.go.jp/pid/910369
口絵は長谷川小信。