明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『地獄から来た女』 田村泰次郎

1948年(昭23)2月~12月 雑誌「りべらる」連載。 1948年(昭23)太虚堂書房刊。 終戦直後の混乱期に大都市の繁華街などでは生活苦から売春する多くの女性たちが現れた。そうした女性たちの更生と自立を目的とした寮施設を運営する青年長見は、ある夜警察の…

『犯罪の足音』 岡田鯱彦

犯罪の足音:岡田鯱彦 1958年 光風社刊。 1963年 青樹社刊(青樹ミステリー) 岡田鯱彦(しゃちひこ)は国文学者で、古典に題材を求めたミステリー作品もある。これは戦後期に書かれた現代物の一つである。 結核に感染した大学一年生の青年が、病後の療養の…

『遠山の金さん』 山手樹一郎

1961年(昭36)講談社刊、山手樹一郎全集 第29巻 「遠山の金さん」とは、後に遠山金四郎景元として江戸北町奉行および南町奉行などを歴任した人物。柳橋の船宿相模屋の二階に居候する遊び人の金さんはもともと旗本の次男坊の身の上だが、家を飛び出して町人…

『剥製人間』 香山滋

剥製人間:香山滋 1949年(昭24)7月~9月 雑誌「富士」連載。(初出時は『女體剥製』) 1948年(昭23)10月~11月 雑誌「富士」連載。『恐怖の仮面』 1955年(昭30)東方社刊。 東方社の単行本には表題作『剥製人間』と『恐怖の仮面』の中篇2作と短篇4作…

『愛と罪』 中野実

1949年(昭24)8月~1950年(昭25)12月 雑誌「婦人生活」連載。 1951年 東方社刊。 終戦直後の東京の、焼跡が残り、闇市がはびこる中での人々の生活。主人公の舞台装置家岩村は身寄りのない若い女性の来訪を受け、モデルでも下女でも使ってほしいとせがまれ…

『ノア』『三界萬霊塔』 久生十蘭

ノア1 1950年(昭25)2月~4月 雑誌「富士」連載。『ノア』 1949年(昭24)7月 雑誌「富士」掲載。『三界萬霊塔』 戦後に復刊したと公言する一般大衆向けの文芸雑誌「富士」は国土の復興を目指す人々の旺盛な読書慾を満たして大いに販売数を伸ばした。版元…

『花と波濤』 井上靖

1953年(昭28)1月~12月 雑誌「婦人生活」連載。 1954年(昭29)講談社刊。 井上靖を読むのは何十年ぶりかになる。地方都市の裕福な医者の家に育ったヒロインの紀代子は京都の叔母の許に寄宿して、何か仕事を見つけて働こうとするが、生活に追われる境遇で…

『悪魔博士』 西條八十

1948年(昭23)12月号~1949年(昭24)8月号、雑誌「東光少年」連載。 1953年(昭28)偕成社刊。 東光少年 終戦直後の昭和20年代には軍国主義の抑圧から解放されて、数多くの雑誌が出版された。少年少女向けの雑誌も同様で、この「東光少年」も国会図書館デ…

『母孔雀』 竹田敏彦

1956年(昭31)1月~12月 雑誌「小説倶楽部」連載。 1956年(昭31)東方社刊。 ヒロインは若後家の身ながらも兜町で「紅将軍」の異名を持つヤリ手の証券会社経営者となっている。女手ながら美貌を武器に、強引な手腕で亡夫の後に会社を立て直した。物語の前…

『悪魔』 稲岡奴之助

奴之助 悪魔1 1911年(明44)嵩山堂刊(すうざんどう)(青木嵩山堂から社名を変更したらしい) 題名から想像して、犯罪小説かと思って読み始めたが、明治期の悲劇小説の部類だった。「悪魔」と題したのは恋人に振られた画学生が、恨みつらみを込めてその恋…

『指環』 黒岩涙香

涙香 指環 1889年(明22)金桜堂刊。原作はフォルチュネ・デュ・ボアゴベ (Fortuné du Boisgobey, 1821~1891) の新聞連載小説『猫目石』(L’œil de chat) だが、涙香は元々の仏語から英訳された本からの重訳で記述していた。発表から1年後には和訳が出版さ…