1953年(昭28)6月~1954年(昭29)7月、「東京タイムズ」連載。
1954年(昭29)桃園書房刊。
八ヶ岳に住むサンカ(山窩)の族長の娘魔子が列車で終戦直後の東京に出てくる。サンカ(山窩)とは山野を漂泊する人々で特異な生活習慣や技能を持っていたとされる。彼らが使う言葉も古風な言い回しが伝承されたものらしく、まともに会話すれば半可通になってしまう。この小説では、自然児として育った魔子と都会人たちの常識の乖離、いわばカルチャーギャップの面白さを描いている。彼女の純粋可憐な心情に都会人たちが驚かされ、自分たちの習慣の醜さに気づかされる。
魔子の姿は岡本爽太の挿絵にも巧みに描かれているが、棟方志功の古代太陽のような女性像の溌剌としたものを彷彿とさせる。プロットには大きな展開は少なく、先々での下劣さや下品さをスレスレに回避して素直に謝ることの繰り返しなので、前半で読了とした。サンカ(山窩)の民への蔑視表現が根本的に無かったのがユーモア小説としての成功だったのかもしれない。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1643629
表紙絵・挿絵は岡本爽太。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%AB