明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『松五郎捕物帳』 栗島狭衣

松五郎捕物帳 1935年(昭10)松光書院刊。作者の栗島狭衣(くりしま・さごろも)(1876~1945) は劇作家の岡本綺堂とほぼ同年代だったが、20代は朝日新聞の記者であるとともに文士劇の主要メンバーとして活動した。30代からは一座を組んで俳優として活動し、…

『夜叉夫人』 樋口ふたば

夜叉夫人1 1897年(明30)聚栄堂刊。書名『夜叉夫人』、作者名:樋口二葉(ふたば) 1910年(明43)晴光館刊。書名『鮮血淋漓』、著者名:樋口新六 (靄軒居士) 1911年(明44)日吉堂刊。書名『意外の秘密』、著者名:やなぎ生 樋口二葉(ふたば)(1863~19…

『われ恋やまず』 長谷川幸延

1952年(昭27)11月~1954年(昭29)3月 雑誌「婦人生活」連載 1954年(昭29)和同出版刊。 長谷川幸延(こうえん)(1904~1972)はラジオドラマや映画の脚本家としても知られ、大阪の人情と風俗を描いた小説家である。生涯で7回も直木賞にノミネートされ…

『孤独の罠』 日影丈吉

1963年(昭38)講談社刊。日影丈吉はフランスのミステリーの翻訳家としてのほうが馴染みがあった。この作品は昔読もうと思って書棚に並べたこともあったが、読めなかった経緯がある。どこかジョルジュ・シムノンに似た作風に思えた。 群馬県の渋川とその周辺…

『銀の鞭』 加藤武雄

1930年(昭5)新潮社刊、「長篇三人全集第5巻」所収。 加藤武雄(1988~1956) は新潮社で文芸誌の編集に携わった後に作家生活に入った。昭和の戦前、戦中、戦後を通して、それぞれの時勢に合わせた作品を書いた。純文学者か通俗作家かをしいて区分する意味は…

『青い星の下で』 藤沢桓夫

1957年(昭32)10月~1958年(昭33)12月、雑誌「読切俱楽部」連載。 1959年(昭34)東方社刊。 藤沢桓夫(たけお)(1904~1989) は昭和初期には新感覚派の作家として知られた。戦後期を経て昭和の末まで大阪を基点に多くの小説作品を残した。 この作品も大…

『怪奇探偵実話』 高橋定敬

1933年(昭8)大日本雄弁会講談社刊。著者の高橋定敬(さだあき)は約20年間、現職の警察官として働いたようだ。大正5年頃から捜査現場の人間の視点から探偵実話を書き始めた。整然とした文体で、簡潔かつ冷静、的確に事件の推移を記述している。収録の12篇…

『頭(ヘッド):探偵苦闘』 吐峰山人

1926年(大15)村田松栄館刊。 作者の吐峰山人(とほう・さんじん)については、生没年とも不明。大正期から昭和初期にかけて歴史物、講談物、探偵物、冒険物の分野で著作を残している。明快な文章で読みやすい。この作品のタイトルは英語カナ表記で「ヘッド…

『花の放浪記』 夏目千代

1953年(昭28)10月~1954年(昭29)12月 雑誌「婦人生活」連載。 1956年(昭31)朋友社刊。(プラタン叢書) 戦後昭和の女流作家は大抵名前だけは知っていたつもりだったが、この夏目千代は知らなかった。40歳近くになっていきなり処女作の長編を婦人雑誌に…