明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

戦中昭和期

『いいわけ夫人:舶来小咄集』 玉川一郎

いいわけ夫人:玉川一郎 1955年(昭30)久保書店刊。 フランス伝統の「小咄」いわゆるコント集。戦前の昭和13年(1938)にすでに『弁解夫人:風流紅毛短編集』というタイトルでほぼ同内容のものが出版されていた。そこでは一篇ごとに作者名が記載されてい…

『脱獄囚』 大下宇陀児

脱獄囚:大下宇陀児 1938年(昭13)皇文社刊。 戦中期の抑圧された時期にさしかかる頃の出版。短篇小説一つだけの小冊子だった。地方の町や村を巡業する旅回りの一座。客の入りは芳しくない。女優の百合子のもとに家出をしてきた少年信吉が現われる。彼は百…

『魔法少年』 大下宇陀児

魔法少年:大下宇陀児 1939年(昭14)興亜書房刊、初版。 1941年(昭16)興亜書房刊、25版。 戦中期の少年少女向け探偵冒険小説集。特に短篇の方は少女たちが主人公のものが多く、恐らく少女雑誌に掲載されたものと思われる。初版後2年間で25版を重ねてお…

『生命ある河』 片岡鉄兵

生命ある河:片岡鉄兵、志村立美・画 1939年(昭14)2月~1940年(昭15)2月、雑誌「富士」連載。 1941年(昭16)非凡閣刊、新作大衆小説全集 第22巻所収。 (いのちあるかわ)片岡鉄兵は大正期には新感覚派、昭和初期にはプロレタリア作家として知られたが…

『人間灰』 海野十三

人間灰:海野十三 1940年(昭15)春陽堂文庫260 どこかSF的寓話の味わいのする短編集全7篇。その大半に海野が生み出した名探偵帆村荘六(ほむら・しょうろく)が顔を出す。 表題作の『人間灰』は、山奥の高原の右足湖畔に建つ空気工場で起きる謎の連続失踪…

『江戸名人伝』 邦枝完二

江戸名人伝:邦枝完二 1937年(昭12)大都書房刊。 これも埋蔵本の一つだった。戦中期にさしかかる頃に江戸の名人と言われた人々12人の横顔をオムニバス形式でまとめたもの。このうちの4篇が最近出版された『蔦屋重三郎の時代』という旧作を集めたアンソ…

『犯罪蒐集狂』 高木彬光

犯罪蒐集狂:高木彬光 1955年(昭30)雑誌「小説倶楽部」に「顔のない女」を掲載。 1980年(昭55)桃源社刊。(ポピュラー・ブックス)全6篇。 犯罪蒐集狂:高木彬光、長尾みのる・画 表題作を含め、全6篇の短編集。『犯罪蒐集狂』は侠客を先祖に持つ探偵…

『少女地獄』 夢野久作

少女地獄:夢野久作 1936年(昭11)黒白書房、かきおろし探偵傑作叢書第1巻。 『探偵小説:少女地獄』というタイトルで、書き下ろしの単行本として出版された。目次によれば、『何んでも無い』、『殺人リレー』、『火星の女』の三部作をまとめた中短編集であ…

『大捕物仙人壺』 国枝史郎

大捕物仙人壺:国枝史郎 1942年(昭17)万里閣刊。 戦争真只中の昭和17年に刊行された国枝史郎の中短編集。表題作の中篇「仙人壺」を読んだ。江戸時代末期に官軍との重要な交渉役を果たした勝海舟や剣士伊庭八郎などの史実上の人物と、女軽業の一座、日本…

『蛇姫様』 川口松太郎

蛇姫様:川口松太郎 1939年(昭14)10月~1940年(昭15)7月、東京日々新聞、大阪毎日新聞連載。 1949年(昭24)日比谷出版社刊。 1968年(昭43)講談社、川口松太郎全集 第2巻 所収。 野州烏山藩の領主大久保佐渡守は病身のため、国元の政事は国家老の佐伯…

『時代の霧』 竹田敏彦

時代の霧:竹田敏彦 1937年(昭12)3月~11月、読売新聞連載。 1939年(昭14)大都書房刊。 モダニズム文化の活況を呈していた昭和初期から日中戦争の暗い影が世相に及ぼし始める時代に、若い二組の男女の恋愛曲線が互いに交叉し、変容していく様を描いてい…