1937年(昭12)3月~11月、読売新聞連載。
1939年(昭14)大都書房刊。
モダニズム文化の活況を呈していた昭和初期から日中戦争の暗い影が世相に及ぼし始める時代に、若い二組の男女の恋愛曲線が互いに交叉し、変容していく様を描いている。銀座でのミステリアスな結社や、復讐心から富豪の財産を乗っ取ろうとする姉弟の企み、保険外交員の裏舞台など、当時の風景に興味深さを感じた。物語の筋のもつれに加えて、それぞれの立場の人物の受けとめ方の微妙な差異なども細かく描かれ、ロマン小説としてはなかなか面白く読めた。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1026243
表紙絵および口絵は作者不詳。
《狂った運命の角度を辿(たど)って、互に反対に交叉し合ふ二條の愛の対角線――その相交る一点を皮肉にも縛る二人の友情だった。》