明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『伝奇紫盗陣』 土師清二

伝奇紫盗陣:土師清二

1940年(昭15)博文館文庫 173, 174所収。前後2巻。

 

(でんき・むらさきとうじん)珍しくも鎌倉時代を背景とした伝奇小説である。北條氏の執権政治の1200年代から江戸時代の1700年代までは500年の隔たりがあるのだが、武家時代の風俗にあまり大きな差異は感じられない。それだけ遠い昔なのだが、漠然と同じ空気感で読んでしまう。中国の宋で発明されたという強力な大砲の製造法を書き記した『火砲鋳要』を手に入れるため、政権要職の2つの勢力と野盗集団の首領白虎、そして北條氏に復讐を企てる妖艶な紫夜叉とが入り乱れて、知恵と策略の争奪戦をくり広げる。道化役の小次郎が話をさらにかき回す。土師清二の語り口は短く、ブツ切れで粗野な感じがするが、特徴的で読みやすい。望ましい結末とは何だったのかは見えず仕舞いとなった。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1110598

 

 

「斯ういふ変調な調子の狂った時世には、どうも学問よりは力だ! 学問は人間を右顧左眄させる。あゝでもない、斯うでもないと思はせる。学問の禍(わざはひ)といふものだ! 我武者羅がいゝ! 直(ひた)押しにグングン押して行くがいゝ」(時頼の憂)




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