1909年(明42)島之内同盟館刊。この版元は大阪で講談本を主として刊行していた。山崎琴書(きんしょ)は講談師で、当世風の探偵講談も数多く手掛けた。人名のタイトル(特に女性の)をつけることは明治期には流行していたらしい。容姿端麗、立ち居振る舞い、教養、芸事のたしなみなど、あらゆる点で完璧な女性の色香に次々と翻弄される男たち(当時の言葉で「鼻下長」(びかちょう)と言った)の見苦しさが目立つが、問題は虫も殺さぬ顔をしながら平気で殺人や盗みをして逃げおおせるヒロインの心の奥底が読めないことにある。大半はお尋ね者の追跡劇なのだが、逃亡先でも変名でなく実名を使い続ける不合理が最も気になった。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は鈴木錦泉、ラファエル前派のロセッティ風に見える。
http:// https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/889508